2013年8月21日水曜日

ぼくのなつやすみ*思い出の山


幼い頃、毎年夏になると近くの山へ昆虫採集に行っていました。
夏休みは毎日早起きをして、外がほんのり明るくなったくらいが出発時刻。

ドキドキしながらお墓の隣を通って、目当ての木を目指す。
今日はどんな大物と出会えるだろう、頭はそのことでいっぱいで怖さも忘れていました。

子どもたちの中でカブトムシとクワガタムシといえば花形の人気昆虫。
僕は専らクワガタ派で、特にヒラタクワガタが大好きでした。

カブトムシ、クワガタ採りは、彼らが集まる樹液の出ている木を探す事から始まります。
ひたすらに山の中を歩き回って、虫たちが集まっている木を覚えては、ルートを作って毎日繰り返し行っていました。
その繰り返しの中で、昆虫の活動時間や木の種類、どの部分に集まりやすいかなどを少しずつ覚えていきました。

中学生以降は山に行く機会も少なくなり、
大学でジュエリーの制作するようになってから、再びモチーフ探しのために訪れるようになりました。
年々、山の様子が変わっていくので、
ここ数年は昆虫採集よりもその環境の変化を確かめる目的が大きくなっていました。
昨年の夏に一度訪れた時は、以前とは随分様子が違っていたので、今年はどうだろうという思いでまた山を登りました。

小学生の頃によくチェックしていたお気に入りの木は、
誰かが樹皮の隙間に隠れるクワガタなどを採るためにしたのか、樹皮が大きく剥がされており、樹液もほとんど出ていないようでした。
この木にはもう長い間昆虫が付いていませんが、わずかな期待を胸に毎年見に来てしまいます。

次の木へ向かって歩いていると、どこからか「カチカチ、カチカチ」と言う音が。
不気味に思いつつ振り返ると、そこには一本のクヌギの木があり、根元をぐるりと囲むように密集した30匹近い数のカブトムシの大群がいました。

カチカチという音は、根元から出ているわずかな樹液をカブトムシたちが取り合っている、戦いの音だったのです。
















以前は一匹見つけただけで心が躍ったカブトムシ。
立派な雄を見つけたときは、それは胸が弾んだものでした。
昨年もカブトムシが沢山いて驚いたのですが、今年は更に数が増え、他の昆虫を寄せ付けない異様な光景でした。

カブトムシは、樹液に集まる昆虫の中での力関係で優位なので、他の昆虫が近寄れず、
時間帯を変えたり違う木にはもっと他の昆虫もいるのかなと思いつつも、衝撃的な光景を前にしばらく立ち尽くしていました。

山を歩いていて気が付いた事がありました。
至る所に置いてある、沢山の切り倒された木。
カブトムシの大量発生の原因は、これなのではないかと思いました。

カブトムシの数が増えたのではなく、山から樹液の出る木が少なくなったために、山全体のカブトムシが数本に集中してきているのかも知れません。














数年前に来た時に死骸を見つけたのを最後に、今年もクワガタの生息は確認出来ませんでした。
今年は死骸すらカブトムシのものばかりだったのです。

思い出の山。
木がなぜこんなに切り倒されているのか、調べつつ
今後も見守っていきたいと思います。